西小倉駅から歩くこと数百メートル。
夜になると、突如として現れる赤い提灯の明かり。
美味い焼鳥が食べたくなると、白い暖簾をくぐる。もう、何年くぐったことか?
年季の入った外観に、戸を開けると、
これまた年季の入った親父さん(すみません)。
店の外観同様、店内もいい感じに、年季が入っている。
「いらっしゃい」
と、呟くように口を開くと、後はひたすら焼きに集中する親父さん。
「いらっしゃい」の挨拶と、オーダーを受けた時の返事以外は、喋らない。
愛想を振り撒くことはもちろん、笑った顔すら見たことない。メガネの奥から、ただ一点、焼鳥を見つめ、焼く。
そんな親父が、毎晩焼く焼鳥の
最大の魅力は、そのコストパフォーマンスにあります。
カウンターに沿って、長く連ねられたメニューの価格は、
1本70円から!
串のほとんどが、100円以下という、驚愕の価格。
近隣店舗の半値以下の価格だといえるだろう。
それでいて、味に妥協はしておらず、
非常に美味い。
パリっとした、絶妙な焼きめをひと口噛むと、肉のジューシーさが口の中を攻めてくる。
ふた口めは、これまた何とも言えない、絶妙な旨さの甘酢ぱいタレでいただく。こんなタレは、他の店では味わえないだろう。このタレも、純たんの魅力だと言えるだろう。好みで、テーブルにある七味を数振り。
皿のキャベツは、気がつくと増えている。
というか、いつの間にか親父さんがのせている。
無口なだけで、客のことはちゃんと見ている。
店内は、非常に狭く、10人程度しか入れない。
開店とほぼ同時に、満席になることもしばしば。
改めて出直そうなものなら、
「材料(串)が無くなったから」と、早々に店じまい。
皆、色んな意味で、味のある親父さんの焼鳥を食べに来ている。
そんな名店の明かりが、街から消えていた…
ある時、久しぶりに、親父さんの焼く焼鳥が食べたくなった。
世の中が自粛モードだったため、営業確認すべく、店へと電話をかけた。
…コールが鳴ることなく、
「現在使われておりません」
という、無機質なアナウンスが聞こえる。
「電話番号、間違えたか?」
と、再度かけるが、結果は同じだった。
「まさか…?」
それでも、自分の目で確認するまでは信じがたく、いや、納得したくなかった。
あの名店が、純たんが、まさか…!?
いつの間にか、
白い大きな看板も、
赤い提灯も、
消えていた。
何かあったのか?何があったのか?
ただ、言える事は、名店が一つ、消えてしまった事。
親父さんが、元気でいてくれる事を、願うだけだ。
ご覧いただきましてありがとうございました(jannemammy)
コメント
思い出の純たん
ありがとうございます。
[…] […]